南砺市平の巨木、高草嶺の大杉。
| 名前 |
高草嶺の大杉 |
|---|---|
| ジャンル |
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| 電話番号 |
0763-23-2014 |
| HP |
https://culture-archives.city.nanto.toyama.jp/culture/bunkazai/bunkazai0232/ |
| 評価 |
3.5 |
| 住所 |
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高草嶺の大杉(たかくさみねのおおすぎ)は、富山県南砺市平地区にある熊野社の境内にそびえる巨木だ。幹周は約7メートル、高さはおよそ40メートルにもなり、旧平村(現在の南砺市)のなかでも随一の大きさを誇る巨杉として知られている。樹齢は400年とも800年とも言われるが、正確な年代ははっきりとは分からない。それでも、間違いなく地域の歴史を静かに見守ってきた古木であり、平成元年(1989年)には平村の文化財に指定されている。この大杉が立つ熊野社は、紀州熊野三山を源流とする山岳信仰を背景に持つ神社だ。祭神には伊弉諾命(いざなぎのみこと)が祀られ、山の神として地域の信仰を集めてきた。五箇山地方では古くから山岳信仰が盛んで、この高草嶺集落にも、もともとは加賀国から移り住んだ人々によって山の神が祀られたという話が残されている。集落周辺の山の神峠へ続く道筋には、古くから村人たちが神を敬うために建てた小さな祠が点在していたそうだ。その祠のそばにはスギが植えられ、この高草嶺の大杉もそのうちの一本が特別に大きく成長したのではないかという説もある。大杉そのものに関する特定の伝説はほとんど残っていないが、熊野社とその周辺には印象的な言い伝えがある。昔、高草嶺の集落裏にある堂林には、古くから神を祀る小さな祠が存在した。そこにあった神像石を、熊野社に合祀しようとして村人たちが運び出そうとしたところ、どうしても石を動かすことができなくなったらしい。結局、人々は神の意思だと受け取り、神像石を元の位置に戻したという。このエピソードは自然への畏敬を示すものであり、山の神や自然の神聖さを重んじる地域の信仰の厚さを感じさせる。日本の神道や古くからの自然信仰では、山や木々そのものを神聖なものとして敬い、大きな岩や樹木が神体として崇められることがよくある。この地域でも鎮守の杜に立つ巨木が特別な存在として扱われてきた例が多い。南砺市の近隣でも似たような巨木伝説がいくつも語り継がれている。例えば相倉集落の夫婦ケヤキは、昔、雪崩が起きた際に村を守ったという話が伝わっているし、利賀村の坂上八幡宮にある坂上の大杉は、かつて土砂災害から村を守った後に落雷で一度は焼失したものの、その後見事に再生したことで地域に希望を与えたという逸話が残されている。こうした背景を知ると、高草嶺の大杉もまた、単なる巨木というよりは地域の信仰や自然への敬意を象徴する大切な存在だと感じられる。地域の歴史と自然信仰が融合したこの場所は、昔も今も変わらず村人にとって特別な場所として大切に守られている。