本覚寺の太いタブノキに感動。
本覚寺のタブノキの特徴
本覚寺の境内にある巨大なタブノキが圧倒的な存在感を放つ、
金沢市指定の保存樹林としての価値が高い、
裏の墓地の中にひっそりと鎮座している風景が印象的。
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裏の墓地の中に鎮座されています。
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| 名前 |
本覚寺のタブノキ |
|---|---|
| ジャンル |
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| 評価 |
4.5 |
| 住所 |
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ストリートビューの情報は現状と異なる場合があります。
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本覚寺(ほんがくじ)の境内には金沢市指定の保存樹林があるが、その中心となっているのが巨大なタブノキだ。タブノキは漢字で椨の木、クスノキ科の常緑広葉樹で、本州の青森西津軽から九州、沖縄、さらには台湾やフィリピンにかけて分布する。成長すると樹高20〜30m、幹の直径も1mを超える大木になる。生命力が強く、海岸近くの丘陵地でもよく育ち、北限に近い金沢でこのサイズまで育ったこと自体が珍しい。本覚寺のタブノキは本堂の真後ろにどっしり構える。幹囲は7.6mから8.44mと記録に幅があるが、市内でも最大級。樹高は約21m。根元で複数幹に分かれる株立ち状の姿で、地面をわしづかみにするような根張りが圧巻だ。タブノキは古くから暮らしに寄り添ってきた。乾燥させた樹皮や葉を粉にしたタブ粉は線香の結合剤に欠かせず、八丈島では黄八丈の染料にも使われる。火に強い木としても有名で、1923年の関東大震災では清澄庭園の照葉樹林が延焼を食い止めたと伝わる。各地の神社仏閣で火伏せの御神木とされる所以だ。本覚寺のタブノキも静かにその歴史を物語る。寺町台は江戸初期、加賀藩が防衛上の要所として寺院を集めた地区。本覚寺もその一つで、境内林は防風防火の生きた防壁として整備された。約1,500㎡の樹林は1986年に保存樹林に指定。伐採や開発が厳しく制限されるおかげで、寺町台の貴重な緑地となっている。市内に指定された保存樹は125本、保存樹林は58カ所。本覚寺のタブノキはその象徴的存在だ。周辺には神明宮の大ケヤキ(樹高33m、幹囲7.8m、樹齢千年以上)や橋場のコウヤマキ(樹齢400年超)など名木が多い。しかし常緑広葉樹でここまで育った巨木は希少で、本覚寺のタブノキが放つ特別感は群を抜く。北陸の重い雪は巨木にとって試練だ。尾山神社のタブノキが2022年末の大雪で倒伏した例もある。それでも本覚寺のタブノキは雪吊りや支柱など細やかな手入れで現在も健在。400年近い歳月を支えてきた人の手と樹の生命力に頭が下がる。派手な伝説こそないが、この巨木は数百年変わらずここに立ち続ける事実そのものが物語だ。境内で見上げれば、枝葉の重みと静けさが寺町台の歴史と重なり合う。木一本は村一村、と言われてきた。一つの大木には鳥も虫も菌も住み着き、葉は土を肥やし、枝葉は陽射しと雨を調え、根は地下水を支えて田畑や井戸を守る。つまり一本の木がもたらす恵みは村全体を養うほど大きい。だからこそ先人は巨木を粗末に扱わず、村人総出で守り育てた。本覚寺のタブノキを見上げると、その教えが腹に落ちる。俺もこの木の下に立つたびに、緑を守ってきた人々の覚悟を思い出し背筋が伸びる。寺院を囲む緑は街歩きをする俺たちの感覚を整えてくれる。早朝、山門前に立つだけで湿った土と葉の匂いが鼻腔を満たし、ヒヨドリの声が頭上を滑る。夏はアオスジアゲハがツバキの間を縫い、秋にはヤブツバキの紅が暗がりを灯す。巨木は景色ではなく季節のグラデーションを支えるプラットフォームだ。金沢の中心部でこれほど密な照葉樹林に触れられる場所は少ない。本覚寺のタブノキは過去の空気を閉じ込めた天然のタイムカプセル。寺町台を巡る散策の締めにこの木を仰ぐと、五分立ち止まるだけで体内時計がリセットされる感覚がある。本覚寺のタブノキは都市に残された自然遺産であり、街の歴史と文化を語る生きた証人だ。行政と地域が手を携え、この巨木を次の世代へ堂々と引き継いでいく未来を強く願う。