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眼目新丸山遺跡は、富山県内で初めて旧石器時代の痕跡が確認された遺跡とされる。約2万5千年前の石器群が見つかっており、北陸に人類が住んでいた確かな証拠の一つとされる。眼目新丸山遺跡(さっかしんまるやまいせき)は、上市町の丸山台地上に所在する遺跡で、白萩川左岸の河岸段丘(標高約200メートル)に位置している。旧石器時代のナイフ形石器が見つかったことで知られ、特に1952年に報告された出土例は、富山県内で初めての旧石器時代遺跡として注目された。地元では「眼目」を「さっか」と読み、この一帯は古くから交通の要衝として知られていた。この遺跡は、日本における旧石器時代研究の初期段階で発見された。1948年ごろ、地元の小学校教員であった森秀雄氏が、この地でナイフ形石器を採集したことがきっかけとなり、数年後の1952年には学術的な報告がなされた。当時、旧石器時代の存在自体がまだ新しい概念だったため、眼目新丸山遺跡の出土例は全国的にも早期の発見例に数えられる。この発見は、戦後の日本において在野の研究者や教育者が果たした考古学的役割を象徴する事例としても語り継がれている。1993年には上市町教育委員会によって本格的な発掘調査が行われ、800平方メートルの調査区から旧石器時代の石器が73点出土した。これらはナイフ形石器、削器、彫器などで構成され、主に3つの密集地点に集中していたことが確認されている。この分布状況から、専門家はこの地が狩猟採集民の一時的な活動拠点、いわゆるキャンプ地であった可能性を指摘している。遺跡からは住居跡や炉の痕跡は発見されていないものの、石器の種類と分布から、単発的な採集ではなく、一定期間にわたって繰り返し人々が訪れていたことがうかがえる。眼目新丸山遺跡で見つかったナイフ形石器の一部は、山形県の東山遺跡などで出土する型式と類似しており、遠方地域との文化的共通性を示唆するものとされる。出土した石器の素材には、地元産の安山岩や砂岩のほか、遠方から持ち込まれたとみられる石材も含まれており、当時の人々が広範囲に移動していた可能性が考えられている。また、この時期にはナウマンゾウやオオツノジカなどの大型哺乳類が日本各地に分布しており、そうした獲物を求めて山麓地帯を巡る生活があったことが想像される。この丸山台地には、旧石器時代だけでなく、その後の縄文時代や古墳時代、平安時代にかけての生活跡も確認されている。旧石器時代層の上位には、縄文時代草創期から前期にかけての土器片や竪穴住居跡、炉跡、柱穴などが検出されており、さらに上位からは古墳時代~平安時代の土師器・須恵器や管玉なども見つかっている。これらは「丸山B遺跡」として報告され、眼目新丸山遺跡との地層的な包含関係が確認されている。こうした重層的な遺跡の構成から、この地域が先史時代から古代に至るまで、連続して人々の生活の場であったことが明らかになっている。なお、現地は調査後に埋め戻され、現在は草地や道路となっており、案内看板が設置されているのみで遺構を直接見ることはできない。ただし、出土した石器の一部は、町内の「弓の里歴史文化館」に収蔵されており、時期によっては展示も行われている。眼目新丸山遺跡周辺には、ほかにも注目すべき先史・古代の遺跡が多い。たとえば縄文時代の極楽寺遺跡や、弥生時代中期の江上A遺跡がそれにあたる。特に江上A遺跡では、弥生土器の高坏や甕、さらには青銅製鏡片や鉄素材も出土しており、北陸地域における弥生文化の展開と、他地域との交易の一端が示唆される。さらに中世には、同町黒川地区に黒川遺跡群が形成され、平安末~鎌倉時代にかけての経塚や墓跡が築かれた。これらは宗教的な背景を持つ遺構であり、古代から中世にかけて、この地が生活の場だけでなく信仰の場でもあったことを物語る。また、眼目地区には1370年創建と伝わる曹洞宗の古刹・眼目山立山寺(がんもくざんりゅうせんじ)が存在し、その参道に立ち並ぶ樹齢400年を超える栂の並木は富山県の天然記念物に指定されている。立山信仰と結びついたこの寺院は、後の時代の宗教的営みの象徴とも言える。このように、眼目新丸山遺跡は単独の旧石器遺跡としてだけでなく、丸山台地および上市町一帯における人類の長期的な活動を示す拠点として位置づけられる。旧石器時代の狩猟採集から、縄文・弥生・古墳・平安、さらには中世の宗教施設に至るまで、多層的な文化の蓄積がこの地には存在している。口コミとして述べるなら、現地の案内看板と合わせて、出土資料の収蔵先である歴史文化館を訪れることで、目に見えない遺跡の実態に触れられるだろう。旧石器時代という最も古い時代から続く人の営みを想像する手がかりとして、この遺跡は非常に重要である。とりわけ、富山県内の旧石器時代研究の出発点としての意義は大きく、北陸における考古学史を語る上でも欠かせない存在である。