辰巳ダム湖近くの相合谷城跡探訪。
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| 名前 |
相合谷城跡 |
|---|---|
| ジャンル |
|
| 評価 |
3.0 |
| 住所 |
|
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相合谷城跡（あいあいだにじょうあと）は、金沢市相合谷町の辰巳ダム湖付近にかつて存在した山城の遺跡だ。ここは、歴史の表舞台からはやや遠ざかりつつも、戦国時代後期の加賀国の動乱期を語る貴重な存在として注目される。相合谷城の正確な築城年代や築城者ははっきりしていないが、16世紀後半、加賀で自治を行っていた一向一揆が築いた小規模な城郭の一つと考えられている。加賀は当時、一向宗（浄土真宗）の門徒による自治が90年近く続いた「百姓の持ちたる国」と呼ばれた地域だが、この城の初代城主とされる平野神右衛門（ひらの じんうえもん）もまた、その一揆勢力の一人として活躍した人物だった。やがて北陸の覇者として織田信長が登場すると、この地域の情勢は一変する。信長配下の柴田勝家や佐久間盛政（さくま もりまさ）が北陸を平定したことで、相合谷城も織田方の手に落ちる。特に佐久間盛政は金沢に入って尾山御坊（金沢城の前身）を拠点化し、周辺防衛のため鷹巣城（たかのすじょう）を整備、その付属砦として相合谷城も改修されたようだ。相合谷城の構造はシンプルで、主な遺構は尾根筋の小さな平坦地を中心に空堀や堀切といった防御施設を設けていたらしい。かつては雑木林の中にその痕跡が明確に残っていたが、近年の辰巳ダム建設（2008～2012年）に伴って地形が大きく改変され、城跡の遺構はほぼ消失した。戦国期にこの城が果たした役割は、主に鷹巣城の前線防衛としての位置付けであった。実際、天正12年（1584年）に前田利家（まえだ としいえ）と越中の佐々成政（さっさ なりまさ）が激突した際には、成政軍によって鷹巣城が襲撃を受け、相合谷城周辺もその攻防戦の舞台になった可能性が高い。その後、豊臣秀吉の天下統一によって北陸の混乱は終結し、前田家による支配体制が確立されるとともに、この小さな砦も歴史から姿を消していった。地元にはこの城跡にまつわる興味深い伝承も残っている。かつて城跡周辺は村人の火葬場として利用され、地域住民にとっては先祖を弔う特別な場所でもあった。そのため、ダム建設に際して地元では城跡の消滅を惜しむ声が上がったという。また「青谷砦」と呼ばれる別の砦との混同もあり、一時期は遺跡の位置が混乱したこともあったが、現在では相合谷城と青谷砦は異なる城郭と理解されている。近年では辰巳ダム建設を巡る保存運動を契機として、この城跡の重要性が再評価されつつある。行政資料や郷土史家らの尽力で記録保存が図られ、遺跡消失直前の貴重な状況が後世に伝えられた。ただし、行政が遺跡位置を改訂した経緯については地元で議論を呼び、「架空の城跡が作られたのではないか」という疑問が残ったままになっている。相合谷城跡の歴史を見つめることは、織田・前田の支配に至るまでの加賀の戦国時代を再確認することでもある。この城の物語は歴史の流れの中で決して派手なものではなかったかもしれないが、地域の人々が代々大切にしてきた土地の記憶を感じさせる。遺構は今では目に見える形では存在しないが、その歴史は静かに語り継がれ、訪れる人に想像力を与えてくれるだろう。