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赤と青の白いダンス。大阪の下町に見つけたダンスホール。バブル時代を青春18きっぷで快速列車だった私は、久しぶりにホールを沸かそうと、腕をまくりながら扉をあけた。『へい!らっしゃい!!』そこは寿司屋だった。いや、正確には寿司屋ではなく床屋だ。しかし、寿司屋だった。『上着かけましょかい?』寒いのに...と思いながら、断るのもなんなので、上着をあずけた。しかし、室内は冷え込んだ冬の寒気を感じさせない適した温度。いわゆる[適温]だった。『どうぞ、お掛けに。』言われるがままにカウンターに座った。いや、正確にはカウンターではなく、バーバー椅子だ。しかしバーバー椅子だ。間違えるわけはない。そこは。バーバー椅子だ。おそるおそる座ると、ここは私の場所なのか?と錯覚した。合うのだ。お尻が合うのだ。見つけた、お尻のワンルームマンション。そんな最高の椅子との出会いに、初入店の緊張がほぐれつつある私の背後から『こりゃまた難しい坊やがきたもんだ』と鋭い声がした。なんだと?客に向かってなんて言いぐさだ!!立ち上がって文句を言おうとしたところ、肩に手を置かれ機先を制された。『ツラかったろ?』次は先程の尖りはなく、丸い声でささやかれた。そう私のつむじは後頭部の下の方によっていて、寝癖のように髪がハネるのでセットが難しく時間がかかるのだ。それを一瞬で理解し、苦節の人生を理解してくれたのだ。ゆるむ涙腺にチカラを入れ、気丈に振る舞う。『さすがですね。やはり、わかりますか?』私の問いに、『わかるさ!俺もそうだから!』理解者は理解していた。自身も同じ境遇を味わったから、私の傷を見つけてくれたのだ。見つかったワタシの傷のワンルームマンション。『よかったらカットは俺に任せてくれるかい?』まさに、寿司屋の[大将のおまかせ]状態だ。手に握られたのは光り物。アジ?サンマ?サバ?いいやもちろん銀に輝くハサミさ。『つむじの場所、上にあげちゃうね』最初、言ってる意味が分からなかった。しかし、結果として私は魔法を使われた。手術なしでつむじの場所を変えられたのだ。毛量、長さをうまく調節し、主人は魔法を使った。確かな技術を感じながら、心地よいハサミのリズムに睡魔の小悪魔がのぼってきた。かわいいんだ。しかし小悪魔が急に霧散した。脳裏によぎる『値段』の恐怖。こんな高等技術を駆使されたら、値段も安くはない。財布の中には五千円。足りない。こんな魔法を使う主人の腕には万単位の懸賞金だ。足りるはずがない。近くのATMの場所を思い出しながら、勇気をだして『いくらですか?』と訪ねた。『3000』。ド、ドルですか?『アホかい!ジャパニーズイェンさ!』はじめよう価格破壊。もう初めて来た店とは思えない空間がそこにはあった。髪を切り終えて、疲れた頭皮を毛穴をシャンプーという母体に包まれ癒されたあと、間奏する乾燥をされながら、『ワックスの付け方教えてあげるよ』と返事も待たずに整えはじめた。その日はもう帰るだけだし必要なかったが、この大魔法使いがどんなマジックを使うのか、もう楽しみでしかたなかった。指先により盛り上がる頂点部。やはりここはダンスホールだった。店長というDJが髪の毛のダンサーのボルテージをあげあげだ。『こうすると顔が小さく見えて、かっこよくなるよ』鏡全てを埋め尽くす顔。大きな顔にマジックの効果はなかったが、いつもよりカッコいい自分に2つ丸をつけてちょっぴり大人さ。代金を払って店を出た。店先では赤い愛と青の優しさが、未だにダンスを踊っていた。